自然の色は何よりも。

スパニッシュビューティーの花が咲いた。不思議と、うれしい気持ちと、終わりが始まった、つまりもうすぐ散ってしまうことを思って切ないような気持ちになる。ひとつひとつ、見届けたいと思う。壁中がピンクに染まった頃、あまりにたくさんあるので、何本か切って部屋に飾る。友達にあげたりもする。でもハサミを入れるときは、その命が終わる時を私が決めることになるようで、やっぱり心が痛む。こんなにたくさんあるんだからとも思うが、やっぱり、他の花の影になってしまって見えないのや、飛び出しているものなどを選んでしまう。なんだろう、スパニッシュビューティは一季咲きだから特別にその想いが強い。花弁が緩く、波打つような花は、下から見上げるのがいちばん美しい。壁について咲いているそこが、生きて、命を終える場所なのだ。
毎年、写真を撮ったり、花びらを乾かしたり、美しい時を見逃すまいと何かするんだけど、乾いた花びらはやがて茶色く変色し、写真は思ったよりも少なく、これしかなかったかな、という感じ。
そんな折り、ネットで「おうちでプリザーブドフラワー」ができる薬品を見つけた。プリザーブドフラワーにすれば、姿はそのまま、1年くらいの間はやわらかな感触が楽しめる。生花みたいな。
で、今朝初めてその作業をしたのだけど、いったん脱色して色素を付けて、というものなので当然ながら一度色がなくなるわけで。
生き生きと美しかったピンク色があっという間に抜けて真っ白になったとき、ちょっと後悔した。瓶の中につかっているのを見た時は、ホルマリン漬けとかそんな言葉がよぎった。手袋をして薬品の中に手を入れたときは、そこに漬けられた花の痛みが伝わるようで、なんとも嫌な気持ちだった。ごめんね、と思った。
ソフトな感触の、生花みたいなものが、明日にはできあがるのだけど・・・。

なんだろう、自然のものから色を取り出す、染色のような楽しさはなかったんだよ。
きれいにできたらうれしいのかな。
誰かが「青いバラができたとして、果たしてそれは美しいのだろうか」
と言っていたけれど、私もそう思った。
薬ももったいないし、小さいバラで作るかもしれないけれど、もうスパニッシュビューティーでやることはないだろうと思う。